環境の種類について

環境について Power Apps
環境について
この記事は、Microsoft Power Automate Advent Calendar 2022 カレンダー3 2日目(2022/12/2 担当分)の記事です。

先日、環境を作成するときの注意点 | たなの覚え書き (tana-techlog.net) という記事を書きました。
その中で、環境の種類についてはドキュメント参照としていましたので、環境の種類とそれぞれの環境の特徴や利用シーンについて考えてみたいと思います。

環境の種類

環境の種類についてのドキュメントは以下の部分です。

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環境の概要 – Power Platform | Microsoft Learn
※ 1

実稼働

「運用環境」「Production」と呼ばれたりします。
実運用を行う本番環境という位置づけという説明がしっくりくるかなと思います。(私は)
業務に利用する環境としては実稼働環境で行われることが想定されていると考えられます。
後述する「既定の環境」を利用している場合もあると思いますが、「既定の環境」は特別な環境であり、Microsoftは業務における実運用環境としての利用を推奨していません。

「実稼働」環境の作成には、テナントにデータベース(Dataverse)の空き容量が1GB以上ないと作成することはできません。
環境はシステムバックアップの機能や手動バックアップの機能を備えています。(ただし、「試用版」環境を除く)バックアップから復元する際にもテナントにデータベース(Dataverse)の空き容量が最低でも1GB以上は必要となります。
環境のバックアップと復元 – Power Platform | Microsoft Learn

「実稼働」環境のバックアップを復元できる先は、「サンドボックス」環境のみという点に注意が必要です。
環境の種類は変更できるので、復元する際には「実稼働」環境を「サンドボックス」環境に変更してから、バックアップを上書き復元し、復元完了後に「実稼働」環境に変更するという運用が必要です。
環境の種類の変更 – Power Platform | Microsoft Learn

既定値

「既定の環境」と呼ばれるテナントに必ずある特別な環境です。
テナントのすべてのユーザーがアクセス可能であり、環境の削除をすることはできないという特徴を持っています。システムバックアップは行われますが、手動でのバックアップには対応していません。
また、「既定の環境」の最大容量は1TBまでの制限があります。
(1TBの容量分のライセンスを購入するとどのくらいの金額になるのでしょうね)
既定の環境 – 環境の概要 – Power Platform | Microsoft Learn


「既定の環境」は必ず存在し、テナントのユーザーは誰でもアクセス可能なため、DLPポリシー(データ損失防止ポリシー)を一番厳しく設定しする場合が多いと思います。だからこそ「既定の環境」はどういった使い方をさせる環境なのかを組織として定義することが大変重要だと考えます。
データ消失防止ポリシー – Power Platform | Microsoft Learn

サンドボックス

リセットをすることが可能な環境です。リセットすると環境に保存されているデータを削除することが可能です。初期化されるイメージです。
「実稼働」環境で本番運用をする前のテストなどを実施する環境として利用が想定されます。
特定のプロジェクトで利用されるテストデータでの開発・検証を目的とし、プロジェクト完了後、リセットし、次のプロジェクトで利用するといった使われ方が考えられます。
環境をリセットして、削除および再プロビジョニングする – Power Platform | Microsoft Learn

試用版

「試用版(標準)」と「試用版(サブスクリプションベース)」の2種類があります。どちらも環境を作成するときの注意点 | たなの覚え書き (tana-techlog.net) でも記載したように「試用版」環境はテナントの容量に空きがなくても作成することが可能です。

「試用版(標準)」環境は、30日間利用することができ、30日後に環境は自動的に削除されます。
一度だけ30日の延長が可能です。

「試用版(サブスクリプション)」環境は、一定のライセンス(通常は25)のユーザーにて利用が可能な環境です。サブスクリプションの場合は、「試用版」環境の利用期限の延長は可能です。
ただし、 Dynamics 365 試用版サブスクリプションが必要です。

削除することが決まっている場合で一定期間のみ利用するような場合に利用されることが考えられます。新機能を試したり、段階的な導入や利用部門の感触を確認するために、期間限定で特定部門のユーザーに試してもらうといった使い方ができると思います。

試用環境について: 標準およびサブスクリプション ベース – Power Platform | Microsoft Learn

開発者

Power Platform管理センターで作成することはできず、Power Apps開発者プランにサインアップすることで自動的に作成される環境であり、テナントで1環境しか作成できません。

開発者環境は、有償ライセンスを保持していなくて、有償ライセンスでのみ利用が可能な機能を利用することが可能です。
開発やテストを目的とした環境とでの利用のみ許可されており、業務における実運用環境としての利用は禁止されているのでご注意ください。
本番の運用環境に機能を導入する前の機能確認や検証を行うのに適している環境だと思います。

継続的な利用をしている限りは無料で利用できます。ただし、過去90日間非アクティブな状態が続くと、環境の作成者へ通知が行われたあとに環境が削除されます。
Power Apps 開発者プランにサインアップ – Power Apps | Microsoft Learn

※ テナントの設定によっては、Power Apps開発者プランにサインアップできない場合があります。その場合は、自社テナントの管理部門に確認してください。

「Microsoft 365 開発者プログラム」というMicrosoft 365 E5ライセンスの機能を無料で90日間(更新可)利用できるテナントとセットで使われることが多いかなと思います。
開発者プログラム | Microsoft 365 デベロッパー センター

【参考】Microsoft 365 開発者プログラム について
りなたむさんのGitHub:Microsoft 365 開発者プログラム 登録方法
ようさんのYouTube:Microsoft 365 開発者プログラムを登録してみよう – YouTube

Microsoft Dataverse for Teams

「Teams環境」と呼ばれたりします。Teamsのチームに1対1で紐づいた環境です。
Power Platform 管理センターから作成するわけではなく、Teamsでアプリを作成したり、アプリカタログにて提供されているアプリのインストールをすると自動的に作成されます。

※ Teams 管理センターの設定によっては、作成が抑止されている場合があります。その場合は、自社テナントの管理部門に確認してください。

「Dataverse for Teams」環境は、Power Platform管理センターでの容量管理とは別な考え方が適用されています。作成できる環境の上限は、テナントに存在するMicrosoft 365のユーザーライセンス数で異なります。
また、1環境の容量の制限も2GBと決まっています。この制限は、テナントの空き容量に依存しません。容量を増やすには、「実稼働」環境などへのアップグレードが必要になります。
他の環境とは異なる性質を持っている環境となるので、制限事項などたくさん考慮すべき点があります。
Microsoft Dataverse for Teams について – Power Platform | Microsoft Learn

また、Dataverse for Teamsについては、2022/5/5~5/7で開催された「Microsoft 365 Virtual Marathon 2022」のJapanese TrackでRie Okudaさんがお話された「Dataverse for Teams 入門」のセッションを参考にされるとよいと思います。

以下の記事に登壇資料が掲載されています。(Yotubeに動画はまだ上がっていない模様。。。)
今年も参加しました! Microsoft 365 Virtual Marathon 2022 | 株式会社イルミネート・ジャパン (illuminate-j.jp)

まとめ

組織内で環境をどう運用するのか、どういった場合どの種類の環境を利用させるのかは、組織事情によって異なります。
そのため、正解はありません。環境の種類の特徴を把握し、利用者にどのように使わせるための環境なのか、そのためにはどの種類で環境を作成するかといったことを組織における環境戦略という形で定義する必要があります。

参考になる考え方は、Power Platform導入プラクティスの中の環境戦略の確立 – Microsoft Power Platform – Power Platform | Microsoft Learn を確認するとよいと思います。

また、2022/5/5~5/7で開催された「Microsoft 365 Virtual Marathon 2022」のJapanese Trackで登壇させていただいた内容で環境について少し触れていますので、よろしければご覧ください。
YouTube:Power Platform管理者が考えておきたいこと たな M365VM2022 – YouTube
登壇資料:Power Platform 管理者が考えておきたいこと | ドクセル (docswell.com)

注意事項

※1:参照しているドキュメントのキャプチャは「2022/11/09」に更新された内容となります。

環境の概要 – Power Platform | Microsoft Learn

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